栗村修氏 X 渡辺浩(ジークス)緊急対談

雑誌 BICYCLE21 11月号記事からの抜粋です。

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先行リリースされていた iOS 版アプリに続き、Android 版アプリもリリースされ、8月 22 日に正式発売と相成った世界初のアスリート向けウエラブルスタミナセンサー
「GoMore」。しかし、この新機軸のデジタルガジェットの仕組み、そして使いこなし方にまだピンと来ていない読者も多いはず。そこで、今回は GoMore の日本での総販売代理店である株式会社ジークスの渡辺浩代表が誌面に登場。対するは、本紙の連載コラムでおなじみの栗村修氏。両者の対談で GoMore の画期的な使い方が明らかに!

採血をしなくても乳酸値がわかる!

Pic002栗村「ここのところ忙しくて体力も落ちていて、自転車に乗っていた時にパワーメーターを見ていたのですが、結局、オーバーペースになってハンガーノック状態になりました。このスタミナセンサー『GoMore』はこうしたことを防げると思います。 僕が現役の時はパワーメーターが普及しておらず、心拍計の世代でした。でも、GoMoreは心拍計ではないのですね」
渡辺「もちろん心拍計としても使えますが、心拍計を超えたトレーニングができます。取得できるデータ量が多いので、スマホと連動することで非常に多くの情報処理ができるわけです。なおかつスマホはネットにつながるので、自分のやったトレーニングをネットに上げることができます」
栗村「ということは、スマホを持っていればこれだけ買えばいいと。今はGPS連動型やパワーメーター型とかあって価格が違ってくると思うので、価格的にはコストパフォーマンスがありますね」
渡辺「GoMoreは心拍数と同時に血中の乳酸値も計ります」
栗村「選手は血中乳酸値を採血して計りますが、この機械は採血をせずに乳酸値を測定できるということですか」
渡辺「そうです」
栗村「どうやって乳酸値を計測しているのですか」
渡辺「そこは特許出願中ということもあり、あまり詳細に説明できませんが、実は心電図の波を計測することでどのくらいの乳酸値が出るかがわかるというアルゴリズムが組み込まれているのです」
栗村「特許取得となると、類似製品が市場に出にくいということになりますね。ところで僕らの頃は乳酸値というと、それが溜まると足がパンパンになるという理解の仕方でしたが、最近では、乳酸自体はエネルギー源と理解されています。運動していると乳酸が出てきていると」
渡辺「確かに乳酸は疲労物質ではありませんが、乳酸が溜まるタイミングで疲労感が出るというのは、その通りですね。基本的には通常負荷の運動の時点でも乳酸は出ていますが溜まっていきません。ある強度の運動になってくると乳酸の値が上がっていきます。そして、ある時点になるとグッと乳酸値が上がる閾値があります(=乳酸閾値、LT)。昔は無酸素状態と言っていました。乳酸ができるまでには、まず糖が解糖して、ピルビン酸ができて、これがミトコンドリアを介して酸素が入ってきて、ATP(エネルギー、アデノシン三リン酸)を作るという過程があります。その途中に副産物としてできるのが乳酸です。乳酸はエネルギー源としてピルビン酸に再変換され、ミトコンドリアで処理されますが、運動の負荷が上がるとこの処理が追いつかなくなるので、血中乳酸濃度が上がり、疲労につながってくるのです」
栗村「その処理の均衡が破られるかどうかのところが、継続できる運動なのか、疲労していくかの分岐点ですね」
渡辺「そういうことですね。それが乳酸閾値,LTです」
栗村「僕らの時代は心拍計オンリーでした。心拍計を見ながらギリギリのところで運動したり、それを超えないように心拍計にアラームを付けたり。でも、どうも心拍数は日によってブレるし、アバウトでした」
渡辺「心拍数は日によって、体調によっても変わりますし、トレーニングを続けていくと徐々に下がっていきます。乳酸閾値も徐々に上がっていきます。心拍トレーニングは、個人差が大きく計測が難しい最大心拍数を指標として運動強度を想定していることに問題があります」
栗村「そもそも、一般の方が正確なAT、LT値を割り出すこと自体が不可能に近いです。しかし、GoMoreはLT値をある程度割り出してくれるということですね」
渡辺「そうです。さらにいうならば、パワーメーターを付けたうえでGoMoreを付けてもらうと、よりわかります。FTPテストを20分ぐらい全力でやると、その平均が、選手が疲労しないで1時間こぎ続けることができるFTP(機能的作業閾値パワー)の値ということになりますが、そもそも全力で走っているかどうかわかりません。そこでGoMoreを使えば、スタミナゼロというところまで追い込めます」

オーバーペースやスローペースとはサヨウナラ!
GoMoreのペース把握が初心者を救う

栗村「初心者でもわかりやすい表示がありますね」
渡辺「スマホの画面には現在残っているスタミナ値が表示されて、それに応じて笑顔のマークがどんどんつらい顔に変わっていきます。また、走行距離と今のペースであと何km走れるかも出ます。あと50km走らないといけない時は、あと50km走れるような、こういう負荷で走らないといけないということがわかるわけです」
Pic003栗村「それは特に初心者にとっては大変助かりますね。前述のハンガーノックは北海道のあるライドに参加した時のことだったのですが、パワーメーターの数字が逆に減速する原因になってしまったのかもしれません。心拍計とパワーメーターの弱点は、自分の身体の数値の指標を理解していないと、ただ現状を知らせてくれる機械に過ぎないということですね。だから、自分がいまどのような状況にあるのか、最大でどのくらいできるのかというのは、自分の正確なデータを持っていないとわかりません。このGoMoreを付けて走りたかったです。イベントレースではスピードを出して抜き去っていく人につられて、つい自分もスピードを出してついていってしまい、オーバーペースになってしまうことが起こりやすいですが、GoMoreがあればそういうことを防いでくれますね。人間の感覚に比べて客観的な正確な数字を出してくれますし、その日に自分が可能な最大速度を算出してくれる」
渡辺「そうです。GoMoreに50kmと表示されたということは、全力で50km走れます。つまり50km走れるためのペースがここに表示されるということです」
栗村「100km走るコースで200kmと表示されたら、今よりもペースを上げられる。オーバーペースも防げるし、逆にペースアップの目安にもなるということですね」
渡辺「その通りです」
栗村「すごくいいですね。視覚的に見れるので、特に女性やビギナー、メカに弱い人などでも使いやすいです」
渡辺「そうですね。そういった方達にもオススメできますし、もっと鍛えたいという方達も、GoMoreがあればどこまで追い込めるか、さらにどのくらい負荷をかければいいのかなどがわかるわけです」

トレーニングを客観的に見つめて練習の質が向上! 
パワーメーターとの相乗効果も魅力的

栗村「初心者だけでなく、本気でトレーニングする方にも役立つ製品でしょうね」
渡辺「上級者向けとしても十分使えます。FTPの計測時はパワーメーターを付けて計測しますが、20分追い込むのはなかなか難しいですね。その日の体調とかもあります。でもGoMoreを付けて計測時に追い込めば、正しくいFTP計測ができます」
栗村「FTPは今やプロではなくて市民レーサーの有酸素運動の指標みたいになっていますが、ひとり歩きしている感もあります。FTPテストは絶対値ではなく、ある一定の時間内のタイムトライアルをして出てきた数字なので、精神力の強い人と弱い人だとかなり数字が変わってきてしまいます。また、同じ人でもその日によって異なります。でも、その曖昧な部分をGoMoreは補足できますね」
渡辺「理想は1時間ですが、20分でやったとすると、20分でぴったりゼロにするようなペースでこいでみる。GoMoreの表示の残量をゼロにするようにこぐわけです」
栗村「つまり、あと1分だと頑張ってこいでも、GoMoreの残量が20%だったとすれば、実はそれまでに追い込めていないということですね」
渡辺「そうなんです。その場合はゼロになるようにパワーを上げてこげばいいわけです」
Pic004栗村「体感的には苦しいが、まだ踏めるとGoMoreが教えてくれるわけですね。これは面白いですね。タイムトライアルを走る時も、ワット数を見ているともっと踏めるのに苦しいと錯覚で思い込んでしまうケースがあります。パワーメーターとセットで使えば、いい相乗効果が期待できますね。上級者にとっても素晴らしいです。
パワーメーターに関しては、実は単に付けてるだけになっている人が結構いるんですね。ただ数字を見ているだけになっている。毎日乗っていれば頭が整理されてその数字の意味がわかってきますが、GoMoreを使えばパワーメーターを生かすことができますね。自分のターゲットをはっきり設定できるようになりますから。5分走とかもできますか?
渡辺「できます。ただし1分は無理です。最低3分は乗ってもらわないと」
栗村「この前、ロードレースの経験はありませんが野球やサッカーなどの経験がある大学生を集めて、選手発掘のトライアウト企画をやりました。素人の彼らをローラーに乗せて、3分走や10分走をやらせたのですが、『3分で全力を出し切るようにこいでください』と言うと、彼らは初めてなので力が残ってしまうのです。しかし、見ている僕らは出し切っているのか、力が残っているのかわからないわけです」
Pic005渡辺「GoMoreはBluetoothに接続できますので、近くにいるコーチも画面を見ることができます。それを見て、もうすこしこげるとか、抑えるといった指示もできるわけです」
栗村「人材発掘する時も、パワーメーターと心拍計だけ付けてもらっていてもわからないです。GoMoreがあれば、より客観的にその人の能力を知ることができますね。スポーツのコーチがGoMoreを知ったら、加速度的に導入が進むと思います」
渡辺「スポーツの世界では、そもそも100%の正確な数値を測定することはできません。乳酸値だって人によって違いがあります。しかし、GoMoreを使い続けることによって、その人の固有の数値がわかってくるんですね。これが最大のメリットです」
栗村「ある程度の誤差が出たとしても、その許容範囲を理解すれば、これはすごいですね。最初は初心者向けかなと思いましたが、パワーメーターと併用すれば人材発掘にも使えます。パイオニアの製品と被らないので、コラボしてもいいですよね」
渡辺「リアルタイムで無酸素エネルギーが減っていくのがわかりますから、リアルタイムでどれだけパワーを使えるかわかるという点も大きいですね」
栗村「初心者にとっては『あなたのエコメーター』、上級者にとっては『もっとがんばれるメーター』ですかね。メンタルという数値化できない部分を表示してくれるとも言えますね」
渡辺「はい」
栗村「特にタイムトライアルに有効ですね。常にペースが一定していますから。ロードは駆け引きなどがありますから、あまりペースは一定していません」
渡辺「そうですね。ペースを一定に保たなければいけない競技にももちろん向けていると思いますが、ヒルクライムにも向いていますね」
栗村「そうですね。特に初心者はヒルクライムでオーバーペースになりやすいです」
渡辺「インターバルトレーニングにも使えます。ペースを落とした時にどれくらい回復するか、数値でわかりますから。インターバルトレーニングではオーバーペースになってあまり効果的でない練習をやってしまう場合が多いですから」
栗村「質の高い練習が実現できますね。画期的な製品です。あとは全日本の強化ヘッドコーチの浅田顕監督など、日本のトップの方にこの製品の感想を聞いてみたいですね。自転車競技のトップレベルの人からGoMoreに対する指摘があれば、上級者向けにもっと改良できるかもしれません」
渡辺「それはぜひ検討したいですね。上級者の方にもぜひ試していただいて、ご意見を寄せていただければと思います」
栗村「自分は人材発掘ですごくメリットを感じました。今、自転車の人材発掘は少ない人数を対象にしていて、2年ぐらいかかっています。それをもっと多数の人を対象にして短期間でできないかと考えています。この製品はそれに役立ちますね」
渡辺「GoMoreとパワーメーターを併用して人材発掘すれば、もう一目瞭然です。ぜひ役立てていただきたいと思います」

キャリブレーションを正しく終えるために

GoMoreアプリには、ランニング屋内ランニングサイクリング屋内サイクリングトレッキング屋内ワークアウトと6つのトレーニングモードがあります。

それぞれのモードでは、初めてGoMoreを使用する際にキャリブレーション(個々の能力測定)が必要になります。運動の違いにより使う筋肉も違うため、トレーニングモードはそれぞれのトレーニングに最適化されたプロファイルに分かれています。キャリブレーションでは、個々のトレーニングに最適化されたプロファイルを個人の能力値でアジャストするという作業を内部的に行っています。そのため、使う筋肉が同じである『ランニング』や『屋内ランニング』は、どちらかのモードでキャリブレーションが完了すればいいということになります。『サイクリング』と『屋内サイクリング』についても同様です。キャリブレーションをやりたく無い場合は、「メニュー > バージョン情報 > キャリブレーションステータス」の項目をオンにすることでキャリブレーションを行わずにGoMoreを使うことはできます。しかし、正しくキャリブレーションを行うことによって、以降のトレーニングでより正確な運動能力を計測することが出来るようになるので、キャリブレーションを行うことをお勧めします。

キャリブレーション中の重要なポイントは、『一定に保てるベストの運動強度で最低15分はその運動を続ける必要がある』ということです。例えば、キャリブレーションを終了する前にペースを落とすとか、休憩してしまうと、キャリブレーションを正しく完了できません。キャリブレーションを終了する直前まで心拍が高い値を示していることが重要です。

下の画面のような内容で、キャリブレーションは正しく完了することができます。

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GoMoreスタミナセンターを装着し電源をオンにしてワークアウトの種類を選択すると、ランニングでは5Kmサイクリングでは10kmトレッキングでは1km屋内ワークアウトでは500kcalの [キャリブレーション開始] 画面が表示されます。それぞれの目標をクリアできるようがんばりましょう。ただし、これらの距離やカロリー消費の値は、あくまでもキャリブレーション中のトレーニングを行う目安です。上記の距離やカロリー消費に満たない値でも最低15分の運動を行えばキャリブレーションを正しく完了できます。

新キャリブレーション開始

理想的には、15分間全力でそれぞれの運動を行って、それ以上は無理というレベルまで追い込むことですが、できない場合はとにかく一定に保てるベストの運動強度で15分間の運動を続けることを目標にしてがんばってください。

キャリブレーションを終了すると『呼吸について』、『筋肉の状態について』、『疲労の度合いについて』の3つの質問ページが順に表示されます。最後の『疲労の度合い』については、「ベストな運動強度で」ということなので、当然『8-9』もしくは『10』を選択できるような強度で運動を行います。

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【注意点】

  • GoMoreアプリのキャリブレーションでは、それぞれ最低15分間の運動が必要です。15分未満でキャリブレーションを終えてしまうと、その回のキャリブレーションは失敗したことになり、「キャリブレーション未完了」となります。ただし、キャリブレーションとして行ったトレーニングは、終了時に保存することが可能です。
  • キャリブレーションが未完了の場合は、次回のセッションでもキャリブレーションが始まる仕様となっています。

キャリブレーションが正しく完了できない場合は、次のどちらかのメッセージが質問への回答直後に表示されます。

CalibrationFailed

サイクリングとランニングの屋内専用モード

GoMoreアプリにサイクリングとランニングの屋内専用モードがそれぞれ追加されました。

iPhone用はv1.3.0から、Andoridはv1.0.0からとなります。(すでに公開中)

モードの追加に合わせて、GoMoreアプリのトレーニングモード選択画面も少し変わりました。(iPhone版とAndroid版の画面)

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今までは、例えば屋内でローラー台を使っての自転車のトレーニングやトレッドミルを使ったトレーニングでは『屋内ワークアウト』を選択していました。新しいバージョンからは、ローラー台+自転車の場合は『屋内サイクリング』を、トレッドミルの場合は『屋内ランニング』のモードを使います。

トレーニングモードは屋内屋外を分けると全部で6種類になりました。

それぞれの用途は次の表のとおりです。

TrainingModes

『トレッドミル』『スピニングマシン』『ステアマシン』『エリプティカルマシン』はあまり聞きなれない名前ですが、それぞれこんな感じのマシンです。

マシン

高負荷なレースは、キャリブレーションの絶好の機会

自動キャリブレーションでレベルアップ!

クリテリウムレースや自転車ロードレースでは、スピードを出して抜き去っていく人につられてしまうなどで、なかなか自分のペースで走ることができません。しかも、自分の限界を超えるレベルの負荷をかける時間帯が多い為、GoMoreを見ながらペース配分をするような余裕もありません。その時は、スマホの画面を見て走ることは諦めて、ポケットの中にスマホを入れておいてください。(レース中はパワーメータの表示を隠している選手も実際にいるくらいなので、むしろ見ないほうがメンタル的に良い場合もあるようです。)

レースは、格好のキャリブレーションができる場面です!GoMoreはスタミナがゼロになると自動でキャリブレーションモードに入り、運動能力を再チェックしてプロファイルを適切な値にアジャストしてくれます。普段の練習ではなかなか追い込めないような高いレベルの負荷は、まさに自分の限界値を計ることができる絶好の機会です。

GoMoreをスタートさせ、安心してジャージの後ろポケットにスマホを入れておいてください。

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GoMoreはスタミナ残量が60、30、0パーセントになると、スタミナセンサー自身がバイブレーションするので、画面を見ずとも、その時の体の状態がわかります。特に距離が短いレースの場合は、ほとんどが無酸素エネルギーの消費ですので、よりわかりやすいと思います。

レース後には、履歴を見て、どのポイントでスタミナが残っていたかをチェックして、次回のレースに役立てましょう。もちろん、レース中の高負荷で再キャリブレーションされるので、プロファイルのレベルもアップします。その後のトレーニングでは、これまで以上に追い込めることになるでしょう。

なお、一般的な心拍計では、負荷が高い状態が続くと、心拍が一定以上は上がらなくなるので、このような使い方はできません。Gomoreの大きな利点ですね。