「疲労の指標、血中乳酸値を予測できる時代がやってきた!」

雑誌 BICYCLE21 12月号記事からの抜粋です。

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富和清訓(ロードレースドクター)x 栗村修(ロードレース解説者)

「疲労の指標、血中乳酸値を予測できる時代がやってきた!」

サイクルモード2015・ライジング出版ブースにて行われた本誌連載「こちらドクターカー」でおなじみの富和清訓先生と栗村修氏のトークショー。ここでは会場に来られなかった方のため、トークショーの内容を大幅にパワーアップさせて、富和先生の連載コラム出張特別版というかたちでお届けする。

エネルギーの産生と「乳酸がたまる」

「乳酸たまって脚パンパンでさ〜」レース会場でよく耳にする言葉です。「乳酸たまっているからローラー回してきま〜す」。これもまたよく聞きます。
これまで、乳酸は老廃物・疲労物質の代名詞のように言われてきました。しかし、近頃は乳酸は重要なエネルギー源のひとつとして捉えられるようになってきました。老廃物・疲労物質の代名詞と、重要なエネルギー源では、180度異なります。一体どういうことなのでしょうか?
まずエネルギーの産生について説明しましょう。血液からの糖(炭水化物)が細胞膜を通って細胞内に入って、細胞質基質という場所で糖が利用され、ピルビン酸になる過程でアデノシン三リン酸(ATP)が産生されます。また、細胞内のミトコンドリアという器官の中でピルビン酸をもとに大量のATPが産生されます(図1)。pic002このATPがエネルギーの素で、ATPがアデノシン二リン酸(ADP)になる際にエネルギーが放出されます。
従来より、乳酸は無酸素運動(=解糖系)で作られると言われています。では乳酸産生のもとは何でしょうか? それは糖です。図示しましたように、糖が細胞質基質でATPを産生、そしてピルビン酸や乳酸という物質になります。乳酸とピルビン酸の関係は、乳酸を酸化させるとピルビン酸になるという関係です。つまり、乳酸は酸化されてピルビン酸となり、結果的にはミトコンドリア内でATP産生の源となるのです。

乳酸は疲労物質ではない。
人は乳酸をエネルギー源として利用する

ここで少し、筋肉について考えてみましょう。筋肉には大きくわけて2つの種類、遅筋線維と速筋線維があります。特徴は(図2)の通りです。
pic003ピルビン酸の酸化という過程はミトコンドリアで行われ、主に遅筋線維がその舞台になります。一方、解糖系という糖を利用してピルビン酸や乳酸を産生する過程は、主に速筋線維がその舞台になります。つまり、速筋線維で産生されたピルビン酸は別の遅筋線維で主に利用されています。この時、ピルビン酸はMCT(モノカルボン酸トランスポーター)という運び屋を介して速筋線維から別の遅筋線維に運ばれます。エネルギー源を効率よく上手に利用していますね。
乳酸は糖を利用することによって生じます。従来から、糖が枯渇していない状況では運動を終えて疲労している時には「乳酸が多く産生されていることが多い」と言われています。従って、血中乳酸濃度を疲労の指標にすることは間違いではないと考えます。
ただし、疲労の原因はその他の環境、体温、電解質異常を含めた脱水、筋肉の細かい損傷などが合わさったものと考えるべきだとされています。乳酸が酸化され、ピルビン酸を介してATP産生の源になるわけですから、乳酸は疲労物質ではなく、我々は乳酸をエネルギー源として利用しているという捉え方をすべきです。疲労物質と言われると、老廃物で早く捨ててしまわなければならないようなイメージを描いてしまいます。

LTを超えるとどうなるのか

無酸素運動というのは、ATPの産生に酸素を必要としない過程です。しかし、酸素の供給がないために、無酸素運動で乳酸が産生されるというわけではないと考えられています。なぜならば、安静にしていても、充分に酸素を得られている条件でも、無酸素運動によってピルビン酸や乳酸が産生され、またそれを利用してミトコンドリアでさらにATPを産生しているからです。
乳酸閾値(しきいち)ということばを聞いたことのある方も多いでしょう。簡単に言うと、ある運動強度以上になると血中乳酸濃度が急激に上昇するポイントです。乳酸閾値は Lactate Threshold (LT)と呼ばれます(図3)。
pic004我々の身体は糖と脂肪をエネルギーとしています。しかし、脂肪は貯蔵には便利ですが、エネルギーとしてはあまり使い勝手がよくないようです。脂肪をエネルギーとして利用するには少し複雑な過程を踏む必要があるからです。また、脂肪は水に溶けないので運搬に手間がかかります。脂肪は運動強度の低い安静時からでも利用されていますが、大きなエネルギーを要する際にはその運用に間に合わないといったところです。
つまり、LTを超えると、脂肪よりも糖の利用が進みます。また、LTを超えるような運動強度では、アドレナリンなどの交感神経(※)を活発にするホルモンが産生され、交感神経が優位になり、さらに糖の利用が進むようです。さらにLTを超えるような運動強度を要する場合には、大きな瞬発力を兼ね備えた速筋線維が動員されるので糖の利用が活発になるとも考えられています。これらの作用が総合的に重なり合うことでLTを超えるような運動強度になると急に血中乳酸濃度が上昇するとされています。

※動物の体内・臓器などを調節する神経は自律神経と呼ばれ、交感神経が優位な(戦闘モード・活発)
状態と副交感神経が優位な(リラックスモード・安静)状態のバランスによって調節されている

血中乳酸濃度を予測できる
GoMoreスタミナセンサーの衝撃

2015年8月、血中乳酸濃度の状態を体表から予測できる機器が市場に出ました。ジークスの「GoMoreスタミナセンサー」(以下GoMore)です。
この機器は画期的です。今までは乳酸を計測しようとすると、血液検査をしなければならなかったのですが、GoMoreでは体表から予測できるというのですから。
pic005GoMoreはサイクルコンピューターに付随したハートレートモニターのように装着します。GoMoreは特許出願されており、どのような方法で乳酸値を予測しているのか明確なことまではわかりません。しかし、私見の域では、GoMoreが胸部に装着するもので、随時心拍数を計測していることから、心拍数のほんのわずかな変動に着目していると考えます(図4)。
pic007なぜならば、運動中における心拍数のわずかな変動と自律神経の変調については、その関係が過去に研究・報告されているからです。心拍変動解析、周波数領域解析という手法を用いますが、本稿では割愛します。GoMoreは心拍数のわずかな変動を捉えることで、自律神経に及ぼす影響を察知しているのだと考えます。先ほど、交感神経が優位になった場合には糖の利用が進むことを説明しました。GoMoreが心拍数のわずかな変動を交感神経が優位だと察知した場合には、体内では交感神経が優位になり、糖の利用が進むことで乳酸が多く産生されていると予測することができるのです。

GoMoreは良い練習相手になる

トレーニングをする時、従来のハートレートモニター管理では、「最大心拍数は220マイナス年齢」と言われており、それを基準に運動強度を決めていきます。しかし、この場合だと、年齢によって運動強度の限界が決められていました。限界点が決められてしまうと、トレーニングでどのように効果が得られたのかを確認するのは容易ではありません。もちろん、レースでのタイムや順位というものが指標にはなりますが、トレーニングの効果を日々確認するのは難しいです。
pic006ヒトの身体はいろんな環境に順応していく特性を持っています。例えば、高地トレーニングもそのひとつですね。酸素が薄いと赤血球とヘモグロビン、最大酸素摂取量の増加がみられます。同様に、トレーニングで体内に乳酸が多い状況を作ると、その乳酸をもっと利用しようとして、毛細血管やミトコンドリアの数が増加します。ミトコンドリアが増えると、乳酸を利用することが活発になり、同じ強度でも血中乳酸濃度が小さくなり、血中乳酸濃度が急激に上がるポイントであるLTをより大きくすることができます。前述の図3のように、LTがより右側に移動すれば、遅筋線維での乳酸の利用範囲が広がり、より強い運動強度になるまで速筋線維での糖の利用を据え置き、ゴールスプリントに備えることが可能になります。自転車競技での「脚をためる」という行為になるわけです。
LTを上げることはトレーニングの良い指標です。GoMoreは最初に、一定に保てるベストの運動強度でその運動を続けるようにキャリブレーション(体力計測)をするように勧めてきます。それは、ユーザーの限界やLTがどこにあるのかを測定しているのだと考えられます。ユーザーの限界やLTには個人で大きな差があるわけで、その基準を登録しておくのは今後のトレーニングの指標には重要です。
一方で、ユーザーの特徴が記録されているので、手を抜くとすぐに指摘されるのが良い点でもあり、困った点でもあり……。そもそも、手を抜くとキャリブレーションの時点でやり直すようにとGoMoreから却下されてしまいます。特に1人で練習をしなければならないサイクリストにとっては、良い練習相手になると思います。ただし、必ず自身の健康管理を重視したうえでトレーニングを行うことがとても重要です。特にシーズンが終わったこの時期、自身のケア、健康診断などを怠って新たなトレーニングをするのはよろしくありません。

脚がパンパンになる理由

最後に、レース後の「乳酸がたまって脚がパンパン」という表現について。それは、下肢の脹れ(むくみ・浮腫)が目立った症状であり、原因の多くは静脈環流(血液の戻り)が悪くなったために生じていると考えてよいと思われます。レース後の脚では筋線維の細かい傷による物質やカリウムの漏出や乳酸が生じていると考えられ、速やかに取り去るためにも静脈還流を活発にさせることが望ましいのです。


参考文献 八田秀雄. 新版 乳酸を活かしたスポーツトレーニング. 東京: 講談社. 2015
Akselrod S. et al. Power spectrum analysis of heart rate fluctuation: a quantitative probe of beat-to-beat cardiovascular control. Science. 1981; 213: 220-222.
早野順一郎. 心拍ゆらぎと自律神経. Therapeutic Research. 1996; 17(1): 163-235

 

GoMoreスタミナセンサーとローラー台で、質の高いトレーニングを!

木枯らしが吹き荒れるこれからの季節、外での練習は寒くて寒くて、大変ツラいですよね。やっぱり、これからの季節は鍋と熱燗とローラー台が恋しくなります。

ローラー台

ローラー台の練習で問題なのは、そのあまりの単調さに(特に固定ローラー!)途中で気が狂いそうなってしまい、短時間しかできないことでして、結局自分を追い込むのは相当難しいです。GoMoreスタミナセンサーを付けて、ローラートレーニングを行うと、その単調な練習に新しいモチベーションを与えることが出来ます。無酸素エネルギーがどんどん減っていくのを見ると、モチベーションが上がります。おまけに、自分の目標としている値までスタミナを消費することができれば、トレーニングのボリュームをはっきりと目視することが出来ます。

結果として、ローラー台のトレーニングのクオリティを飛躍的にアップすることが出来ます。

冬の寒い季節には、ぜひお試しください!

 

GoMoreスタミナセンサーをハーフマラソンで使ってみた(レポート)

弊社M君のGoMoreスタミナセンサー体験記です。

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11月3日に福井県越前市で開催された菊花マラソンに、GoMoreスタミナセンサーを付けて参加してきました。当日は前半太陽がでて11月としてはあたたかかったのですが、10km過ぎから冷たい雨がふってきて、後半体が冷えてきつかったです。

GoMoreハーフマラソン GoMoreハーフマラソン

昨年、福井マラソンのハーフで2時間20分ほどだったので、
今年の目標は、ずばり2時間を切ること。
3度目のハーフということもあり、給水もうまくとりながら走れて、
無事目標を達成することができました。
GoMoreからのスタミナ30%消費の通知タイミングが、
いつも走っているときに通知されるのと同じくらいの距離での
通知だったので、それほど悪いペースじゃないなと思いながら走れました。
単に『時間』と『距離』だけではなく、『スタミナ』という観点で、
自分の状態を把握しながら走れるのは長距離では重要なんじゃないかなと
思いました。
次はそろそろフルマラソンにも挑戦してみたいなと思っています。

 

栗村修氏 X 渡辺浩(ジークス)緊急対談

雑誌 BICYCLE21 11月号記事からの抜粋です。

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先行リリースされていた iOS 版アプリに続き、Android 版アプリもリリースされ、8月 22 日に正式発売と相成った世界初のアスリート向けウエラブルスタミナセンサー
「GoMore」。しかし、この新機軸のデジタルガジェットの仕組み、そして使いこなし方にまだピンと来ていない読者も多いはず。そこで、今回は GoMore の日本での総販売代理店である株式会社ジークスの渡辺浩代表が誌面に登場。対するは、本紙の連載コラムでおなじみの栗村修氏。両者の対談で GoMore の画期的な使い方が明らかに!

採血をしなくても乳酸値がわかる!

Pic002栗村「ここのところ忙しくて体力も落ちていて、自転車に乗っていた時にパワーメーターを見ていたのですが、結局、オーバーペースになってハンガーノック状態になりました。このスタミナセンサー『GoMore』はこうしたことを防げると思います。 僕が現役の時はパワーメーターが普及しておらず、心拍計の世代でした。でも、GoMoreは心拍計ではないのですね」
渡辺「もちろん心拍計としても使えますが、心拍計を超えたトレーニングができます。取得できるデータ量が多いので、スマホと連動することで非常に多くの情報処理ができるわけです。なおかつスマホはネットにつながるので、自分のやったトレーニングをネットに上げることができます」
栗村「ということは、スマホを持っていればこれだけ買えばいいと。今はGPS連動型やパワーメーター型とかあって価格が違ってくると思うので、価格的にはコストパフォーマンスがありますね」
渡辺「GoMoreは心拍数と同時に血中の乳酸値も計ります」
栗村「選手は血中乳酸値を採血して計りますが、この機械は採血をせずに乳酸値を測定できるということですか」
渡辺「そうです」
栗村「どうやって乳酸値を計測しているのですか」
渡辺「そこは特許出願中ということもあり、あまり詳細に説明できませんが、実は心電図の波を計測することでどのくらいの乳酸値が出るかがわかるというアルゴリズムが組み込まれているのです」
栗村「特許取得となると、類似製品が市場に出にくいということになりますね。ところで僕らの頃は乳酸値というと、それが溜まると足がパンパンになるという理解の仕方でしたが、最近では、乳酸自体はエネルギー源と理解されています。運動していると乳酸が出てきていると」
渡辺「確かに乳酸は疲労物質ではありませんが、乳酸が溜まるタイミングで疲労感が出るというのは、その通りですね。基本的には通常負荷の運動の時点でも乳酸は出ていますが溜まっていきません。ある強度の運動になってくると乳酸の値が上がっていきます。そして、ある時点になるとグッと乳酸値が上がる閾値があります(=乳酸閾値、LT)。昔は無酸素状態と言っていました。乳酸ができるまでには、まず糖が解糖して、ピルビン酸ができて、これがミトコンドリアを介して酸素が入ってきて、ATP(エネルギー、アデノシン三リン酸)を作るという過程があります。その途中に副産物としてできるのが乳酸です。乳酸はエネルギー源としてピルビン酸に再変換され、ミトコンドリアで処理されますが、運動の負荷が上がるとこの処理が追いつかなくなるので、血中乳酸濃度が上がり、疲労につながってくるのです」
栗村「その処理の均衡が破られるかどうかのところが、継続できる運動なのか、疲労していくかの分岐点ですね」
渡辺「そういうことですね。それが乳酸閾値,LTです」
栗村「僕らの時代は心拍計オンリーでした。心拍計を見ながらギリギリのところで運動したり、それを超えないように心拍計にアラームを付けたり。でも、どうも心拍数は日によってブレるし、アバウトでした」
渡辺「心拍数は日によって、体調によっても変わりますし、トレーニングを続けていくと徐々に下がっていきます。乳酸閾値も徐々に上がっていきます。心拍トレーニングは、個人差が大きく計測が難しい最大心拍数を指標として運動強度を想定していることに問題があります」
栗村「そもそも、一般の方が正確なAT、LT値を割り出すこと自体が不可能に近いです。しかし、GoMoreはLT値をある程度割り出してくれるということですね」
渡辺「そうです。さらにいうならば、パワーメーターを付けたうえでGoMoreを付けてもらうと、よりわかります。FTPテストを20分ぐらい全力でやると、その平均が、選手が疲労しないで1時間こぎ続けることができるFTP(機能的作業閾値パワー)の値ということになりますが、そもそも全力で走っているかどうかわかりません。そこでGoMoreを使えば、スタミナゼロというところまで追い込めます」

オーバーペースやスローペースとはサヨウナラ!
GoMoreのペース把握が初心者を救う

栗村「初心者でもわかりやすい表示がありますね」
渡辺「スマホの画面には現在残っているスタミナ値が表示されて、それに応じて笑顔のマークがどんどんつらい顔に変わっていきます。また、走行距離と今のペースであと何km走れるかも出ます。あと50km走らないといけない時は、あと50km走れるような、こういう負荷で走らないといけないということがわかるわけです」
Pic003栗村「それは特に初心者にとっては大変助かりますね。前述のハンガーノックは北海道のあるライドに参加した時のことだったのですが、パワーメーターの数字が逆に減速する原因になってしまったのかもしれません。心拍計とパワーメーターの弱点は、自分の身体の数値の指標を理解していないと、ただ現状を知らせてくれる機械に過ぎないということですね。だから、自分がいまどのような状況にあるのか、最大でどのくらいできるのかというのは、自分の正確なデータを持っていないとわかりません。このGoMoreを付けて走りたかったです。イベントレースではスピードを出して抜き去っていく人につられて、つい自分もスピードを出してついていってしまい、オーバーペースになってしまうことが起こりやすいですが、GoMoreがあればそういうことを防いでくれますね。人間の感覚に比べて客観的な正確な数字を出してくれますし、その日に自分が可能な最大速度を算出してくれる」
渡辺「そうです。GoMoreに50kmと表示されたということは、全力で50km走れます。つまり50km走れるためのペースがここに表示されるということです」
栗村「100km走るコースで200kmと表示されたら、今よりもペースを上げられる。オーバーペースも防げるし、逆にペースアップの目安にもなるということですね」
渡辺「その通りです」
栗村「すごくいいですね。視覚的に見れるので、特に女性やビギナー、メカに弱い人などでも使いやすいです」
渡辺「そうですね。そういった方達にもオススメできますし、もっと鍛えたいという方達も、GoMoreがあればどこまで追い込めるか、さらにどのくらい負荷をかければいいのかなどがわかるわけです」

トレーニングを客観的に見つめて練習の質が向上! 
パワーメーターとの相乗効果も魅力的

栗村「初心者だけでなく、本気でトレーニングする方にも役立つ製品でしょうね」
渡辺「上級者向けとしても十分使えます。FTPの計測時はパワーメーターを付けて計測しますが、20分追い込むのはなかなか難しいですね。その日の体調とかもあります。でもGoMoreを付けて計測時に追い込めば、正しくいFTP計測ができます」
栗村「FTPは今やプロではなくて市民レーサーの有酸素運動の指標みたいになっていますが、ひとり歩きしている感もあります。FTPテストは絶対値ではなく、ある一定の時間内のタイムトライアルをして出てきた数字なので、精神力の強い人と弱い人だとかなり数字が変わってきてしまいます。また、同じ人でもその日によって異なります。でも、その曖昧な部分をGoMoreは補足できますね」
渡辺「理想は1時間ですが、20分でやったとすると、20分でぴったりゼロにするようなペースでこいでみる。GoMoreの表示の残量をゼロにするようにこぐわけです」
栗村「つまり、あと1分だと頑張ってこいでも、GoMoreの残量が20%だったとすれば、実はそれまでに追い込めていないということですね」
渡辺「そうなんです。その場合はゼロになるようにパワーを上げてこげばいいわけです」
Pic004栗村「体感的には苦しいが、まだ踏めるとGoMoreが教えてくれるわけですね。これは面白いですね。タイムトライアルを走る時も、ワット数を見ているともっと踏めるのに苦しいと錯覚で思い込んでしまうケースがあります。パワーメーターとセットで使えば、いい相乗効果が期待できますね。上級者にとっても素晴らしいです。
パワーメーターに関しては、実は単に付けてるだけになっている人が結構いるんですね。ただ数字を見ているだけになっている。毎日乗っていれば頭が整理されてその数字の意味がわかってきますが、GoMoreを使えばパワーメーターを生かすことができますね。自分のターゲットをはっきり設定できるようになりますから。5分走とかもできますか?
渡辺「できます。ただし1分は無理です。最低3分は乗ってもらわないと」
栗村「この前、ロードレースの経験はありませんが野球やサッカーなどの経験がある大学生を集めて、選手発掘のトライアウト企画をやりました。素人の彼らをローラーに乗せて、3分走や10分走をやらせたのですが、『3分で全力を出し切るようにこいでください』と言うと、彼らは初めてなので力が残ってしまうのです。しかし、見ている僕らは出し切っているのか、力が残っているのかわからないわけです」
Pic005渡辺「GoMoreはBluetoothに接続できますので、近くにいるコーチも画面を見ることができます。それを見て、もうすこしこげるとか、抑えるといった指示もできるわけです」
栗村「人材発掘する時も、パワーメーターと心拍計だけ付けてもらっていてもわからないです。GoMoreがあれば、より客観的にその人の能力を知ることができますね。スポーツのコーチがGoMoreを知ったら、加速度的に導入が進むと思います」
渡辺「スポーツの世界では、そもそも100%の正確な数値を測定することはできません。乳酸値だって人によって違いがあります。しかし、GoMoreを使い続けることによって、その人の固有の数値がわかってくるんですね。これが最大のメリットです」
栗村「ある程度の誤差が出たとしても、その許容範囲を理解すれば、これはすごいですね。最初は初心者向けかなと思いましたが、パワーメーターと併用すれば人材発掘にも使えます。パイオニアの製品と被らないので、コラボしてもいいですよね」
渡辺「リアルタイムで無酸素エネルギーが減っていくのがわかりますから、リアルタイムでどれだけパワーを使えるかわかるという点も大きいですね」
栗村「初心者にとっては『あなたのエコメーター』、上級者にとっては『もっとがんばれるメーター』ですかね。メンタルという数値化できない部分を表示してくれるとも言えますね」
渡辺「はい」
栗村「特にタイムトライアルに有効ですね。常にペースが一定していますから。ロードは駆け引きなどがありますから、あまりペースは一定していません」
渡辺「そうですね。ペースを一定に保たなければいけない競技にももちろん向けていると思いますが、ヒルクライムにも向いていますね」
栗村「そうですね。特に初心者はヒルクライムでオーバーペースになりやすいです」
渡辺「インターバルトレーニングにも使えます。ペースを落とした時にどれくらい回復するか、数値でわかりますから。インターバルトレーニングではオーバーペースになってあまり効果的でない練習をやってしまう場合が多いですから」
栗村「質の高い練習が実現できますね。画期的な製品です。あとは全日本の強化ヘッドコーチの浅田顕監督など、日本のトップの方にこの製品の感想を聞いてみたいですね。自転車競技のトップレベルの人からGoMoreに対する指摘があれば、上級者向けにもっと改良できるかもしれません」
渡辺「それはぜひ検討したいですね。上級者の方にもぜひ試していただいて、ご意見を寄せていただければと思います」
栗村「自分は人材発掘ですごくメリットを感じました。今、自転車の人材発掘は少ない人数を対象にしていて、2年ぐらいかかっています。それをもっと多数の人を対象にして短期間でできないかと考えています。この製品はそれに役立ちますね」
渡辺「GoMoreとパワーメーターを併用して人材発掘すれば、もう一目瞭然です。ぜひ役立てていただきたいと思います」

キャリブレーションを正しく終えるために

GoMoreアプリには、ランニング屋内ランニングサイクリング屋内サイクリングトレッキング屋内ワークアウトと6つのトレーニングモードがあります。

それぞれのモードでは、初めてGoMoreを使用する際にキャリブレーション(個々の能力測定)が必要になります。運動の違いにより使う筋肉も違うため、トレーニングモードはそれぞれのトレーニングに最適化されたプロファイルに分かれています。キャリブレーションでは、個々のトレーニングに最適化されたプロファイルを個人の能力値でアジャストするという作業を内部的に行っています。そのため、使う筋肉が同じである『ランニング』や『屋内ランニング』は、どちらかのモードでキャリブレーションが完了すればいいということになります。『サイクリング』と『屋内サイクリング』についても同様です。キャリブレーションをやりたく無い場合は、「メニュー > バージョン情報 > キャリブレーションステータス」の項目をオンにすることでキャリブレーションを行わずにGoMoreを使うことはできます。しかし、正しくキャリブレーションを行うことによって、以降のトレーニングでより正確な運動能力を計測することが出来るようになるので、キャリブレーションを行うことをお勧めします。

キャリブレーション中の重要なポイントは、『一定に保てるベストの運動強度で最低15分はその運動を続ける必要がある』ということです。例えば、キャリブレーションを終了する前にペースを落とすとか、休憩してしまうと、キャリブレーションを正しく完了できません。キャリブレーションを終了する直前まで心拍が高い値を示していることが重要です。

下の画面のような内容で、キャリブレーションは正しく完了することができます。

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GoMoreスタミナセンターを装着し電源をオンにしてワークアウトの種類を選択すると、ランニングでは5Kmサイクリングでは10kmトレッキングでは1km屋内ワークアウトでは500kcalの [キャリブレーション開始] 画面が表示されます。それぞれの目標をクリアできるようがんばりましょう。ただし、これらの距離やカロリー消費の値は、あくまでもキャリブレーション中のトレーニングを行う目安です。上記の距離やカロリー消費に満たない値でも最低15分の運動を行えばキャリブレーションを正しく完了できます。

新キャリブレーション開始

理想的には、15分間全力でそれぞれの運動を行って、それ以上は無理というレベルまで追い込むことですが、できない場合はとにかく一定に保てるベストの運動強度で15分間の運動を続けることを目標にしてがんばってください。

キャリブレーションを終了すると『呼吸について』、『筋肉の状態について』、『疲労の度合いについて』の3つの質問ページが順に表示されます。最後の『疲労の度合い』については、「ベストな運動強度で」ということなので、当然『8-9』もしくは『10』を選択できるような強度で運動を行います。

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【注意点】

  • GoMoreアプリのキャリブレーションでは、それぞれ最低15分間の運動が必要です。15分未満でキャリブレーションを終えてしまうと、その回のキャリブレーションは失敗したことになり、「キャリブレーション未完了」となります。ただし、キャリブレーションとして行ったトレーニングは、終了時に保存することが可能です。
  • キャリブレーションが未完了の場合は、次回のセッションでもキャリブレーションが始まる仕様となっています。

キャリブレーションが正しく完了できない場合は、次のどちらかのメッセージが質問への回答直後に表示されます。

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サイクリングとランニングの屋内専用モード

GoMoreアプリにサイクリングとランニングの屋内専用モードがそれぞれ追加されました。

iPhone用はv1.3.0から、Andoridはv1.0.0からとなります。(すでに公開中)

モードの追加に合わせて、GoMoreアプリのトレーニングモード選択画面も少し変わりました。(iPhone版とAndroid版の画面)

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今までは、例えば屋内でローラー台を使っての自転車のトレーニングやトレッドミルを使ったトレーニングでは『屋内ワークアウト』を選択していました。新しいバージョンからは、ローラー台+自転車の場合は『屋内サイクリング』を、トレッドミルの場合は『屋内ランニング』のモードを使います。

トレーニングモードは屋内屋外を分けると全部で6種類になりました。

それぞれの用途は次の表のとおりです。

TrainingModes

『トレッドミル』『スピニングマシン』『ステアマシン』『エリプティカルマシン』はあまり聞きなれない名前ですが、それぞれこんな感じのマシンです。

マシン

高負荷なレースは、キャリブレーションの絶好の機会

自動キャリブレーションでレベルアップ!

クリテリウムレースや自転車ロードレースでは、スピードを出して抜き去っていく人につられてしまうなどで、なかなか自分のペースで走ることができません。しかも、自分の限界を超えるレベルの負荷をかける時間帯が多い為、GoMoreを見ながらペース配分をするような余裕もありません。その時は、スマホの画面を見て走ることは諦めて、ポケットの中にスマホを入れておいてください。(レース中はパワーメータの表示を隠している選手も実際にいるくらいなので、むしろ見ないほうがメンタル的に良い場合もあるようです。)

レースは、格好のキャリブレーションができる場面です!GoMoreはスタミナがゼロになると自動でキャリブレーションモードに入り、運動能力を再チェックしてプロファイルを適切な値にアジャストしてくれます。普段の練習ではなかなか追い込めないような高いレベルの負荷は、まさに自分の限界値を計ることができる絶好の機会です。

GoMoreをスタートさせ、安心してジャージの後ろポケットにスマホを入れておいてください。

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GoMoreはスタミナ残量が60、30、0パーセントになると、スタミナセンサー自身がバイブレーションするので、画面を見ずとも、その時の体の状態がわかります。特に距離が短いレースの場合は、ほとんどが無酸素エネルギーの消費ですので、よりわかりやすいと思います。

レース後には、履歴を見て、どのポイントでスタミナが残っていたかをチェックして、次回のレースに役立てましょう。もちろん、レース中の高負荷で再キャリブレーションされるので、プロファイルのレベルもアップします。その後のトレーニングでは、これまで以上に追い込めることになるでしょう。

なお、一般的な心拍計では、負荷が高い状態が続くと、心拍が一定以上は上がらなくなるので、このような使い方はできません。Gomoreの大きな利点ですね。

FTPテストの精度を上げる

FTPテストで難しいのは、20分間で全力を出し切ったかどうかわからない点です。20分は決して短い時間ではないので、その間にペース配分を考えてしまい、余力を残してしまうことが多いようです。パワーメーターや心拍計だけでは、精度の高いテストを行うことは難しいと言わざるを得ません。GoMoreを使うことで、余力を残さずに20分間を走りきり、精度の高いFTPテストの結果を得ることが可能となります。
スタミナ推移

上記のグラフは、二人の被験者がFTPテストを行っている際のGoMoreのスタミナ推移を表しています。赤いグラフの人は、残量5%まで追い込んで20分間のFTPテストを終了しているため、精度の高いFTPテスト結果を得ることができます。しかし、青いグラフの人は15%のスタミナがまだ残っているため、FTPの数値としては正確とは言えません。再度テストが必要なようです。

下記の2つのグラフは、パワーメーターを使ってそれぞれの被験者について、出力(Watts)、心拍数(bpm)、ケイデンス(rpm)の推移を表しています。これを見ると両者とも同様な心拍推移を示しており、出力に関しても度合いの違いこそあれ、同様な推移を示していることがわかります。パワーメーターと心拍計を使ったこのような結果からは、被験者が全力を出し切った値か、余力を残した値かが数値化されておらず、精度の高い結果かどうかの判別はできません。

*FTPテストでは、RPE(主観的運動強度)を最大にすることが望ましいのですが、心拍計やパワーメーターでは最大かどうかの判別ができません。

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乳酸閾値:LT(Lactate Threshold)を意識したトレーニングをする

LT:Lactate Threshold(乳酸閾値)を理解して、心肺にかかる負荷を調整しながらランニングやサイクリングなどの運動を行うと、目的にあった効率的で安全な体力の強化が可能になります。LTを上げることが持久能力の向上に繋がりますので、意識することは大切です。

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上記画面を見てください。グラフの上部の赤い線(心拍数)が、濃いグレー部分に入った時、無酸素領域に入ったことを表しています。この無酸素領域に入る境界あたりが、LT(乳酸閾値)と想定されます。

この人の場合、心拍数150〜155以下ぐらいで運動することにより、有酸素トレーニングが出来ます。この数値を目安に、様々な有酸素、無酸素の各種トレーニングを行ってください。(ただし、この値も変化してきます。)また、LT付近のキツさの感覚を覚えられるとなお良いです。キツさの感覚は、ややきつい〜きつい感じになります。(RPE:主観的運動強度の13〜15ぐらい)ちなみに、LTの心拍数を、LTHRと言います。

なお、ローラー台や高温多湿の状態で一定の負荷で運動を続けていると、心拍数が徐々に上がっていきます(カーディアック・ドリフト)。逆に、同じ心拍を維持するようなトレーニングでは、実際の負荷が下がることになりますので、やはり、GoMoreの画面を見て、無酸素エネルギーの下がり方を見ながら、トレーニングすることをお勧めします。

ガーミン(Garmin)やポラール(Polar)などの心拍計だけでは、個々人の血中乳酸値と心拍数の関係を測定することは出来ませんので、心拍数と血中乳酸値から疲労度を測定することが出来るGoMoreは、大きなアドバンテージがあると言えるでしょう。

 

オーバーワークを避けるインターバルトレーニングの方法

高負荷なインターバルトレーニングの場合、何度目かでオーバーワークになることが多いです。特に、アマチュアアスリートの場合は、オーバーワーク後のパワーが出ない状態でインターバルトレーニングを続ける傾向があり、怪我の元になったり、効果の薄いトレーニングとなったりします。

これを避けるため、インターバルトレーニングの目標回数をこなす時に、負荷のレベルを下げる必要があります。このペース配分にGoMoreを使うことが出来ます。これは、心拍計では出来ません。高負荷後のスタミナをみて、一度にどれくらい下がるかを計算できれば、何回続けられるかの目安がわかります。例えば、一回の高負荷部分が終わった時に、スタミナが30パーセント減って、インターバル中に5パーセント戻るようであれば、3〜4回の高負荷部をこなすことが出来る計算になります。

もし、途中でスタミナゼロになったら、有酸素領域の負荷に戻し、無酸素エネルギーの回復を待ちます。それがある程度戻ってからインターバルトレーニングを再開すれば、無理のない効果的なトレーニングとなるでしょう。

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